白鳥と刹那の終着点

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「ああーーっ!」  そこで、京はある人物のことを思い出し、慌てて八千代や厘のほうに向き直った。 「あの寝てる人!大久保 四乃さん!まだ瓦礫の下に埋まってるんじゃないですか!?早く助けないと!」  京が初めてハイツ・デネブの面々と顔合わせをした日、「大部屋」にいた少女。長い銀髪を床まで垂らし、机に突っ伏したような形で眠りこけていたあの人物は、おそらく建物の崩壊に巻き込まれ、まだ瓦礫の下にいるはずだ。  しかし、京の慌てた様子を見ても、その場にいた誰も動こうとはしない。むしろ、呆けたような表情で、皆が京を見つめる。 「えーっと、新入りくん?」  恐る恐る、といったように、八千代が京へと語りかけた。  その声は、夜の冷たい空気を伝って、やがて少年の耳へと届く。 「大久保 四乃って……誰や?」
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