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「この塔のーー番人?」
彼の言葉を反復するように、京は坊主に向かって尋ねる。情報量が多い展開についていこうとしながらも、その表情からは困惑が隠せなかった。
「そうだ。ワシは、この塔に8000以下のポイントしか持っていない『府民』を入れないように見張っている」
嵯峨野 善十郎と名乗ったその坊主は、実に堂々とした口調で、京に向かってそう説明した。
「理由は、まぁ詳しくは言えないからざっくり話すとーーこの塔が、危険だからだ。ワシらは、無駄な人死にが出ないようにしたいのさ。それが勝手だと分かっていてもな」
その声からは、悪意や敵意は感じられない。むしろ、この人物は本当に他の「府民」の身を案じているのだとさえ感じられる。
「この塔に入るのに、8000ポイントが必要だってことは知ってました。でも、それが他の『府民』による制限だとは……」
「すまないな、少年。だが、この中に入るには、生半可な強さでは足りんのだよ」
「……この中に、何があるっていうんですか」
「それは教えられん」
「……どうしてあなたは、他の人のために、そんなことをしているんですか」
「それも教えられん」
「……それなら、この塔について教えられることがあるなら、それを言ってください」
京の質問責めに対して、坊主は少し困ったような顔をしながらも、申し訳なさそうに返答した。
「すまんな、少年。ワシの口からは、何も言えんのだ。……ああ、代わりといってはなんだが、ワシの話ならいくらでもするぞ!?ワシは寺に生まれたおかげで、この通り坊主頭にしていてな。これは決して、ハゲている訳ではなくーー」
「いえ、それ以上は結構です」
真面目な態度から一転、機関銃のように喋り始めた坊主の言葉を遮って、京はそう言い放つ。
坊主はショックを受けたように固まった後、ひとつ咳払いをして、再び京に語りかけた。
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