真実を語る者、真実を騙る者

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「ワシに興味を示してくれなくて、残念だ。ーー少年よ、見たところ8000ポイントを貯めてからここに来た訳ではないようだが......おぬしは今、どれだけのポイントを持っているのだ?」  その問いを受けて、今度は京がギクリとしてしまう。恐る恐るといった様子で、京は左手の指を開き、「5」のジェスチャーを示した。 「なるほど、5000ポイントか。なかなかやるが、まだ足りんな。残りを貯めてから、また出直してきてくれ」 「いや……」  もはや京の緊張は解け、この坊主への警戒心は薄れたもののーーその言葉を告げるには、まだ抵抗があった。 「……5ポイントです」  冷や汗と苦笑いを浮かべながらそう述べた京の様子を見て、黒衣の坊主は一瞬だけ言葉に詰まって……やがて、大笑いを始めた。 「はははははは、面白い!おぬし、面白いな!」 「えーっと……」 「いやいや、おぬしを馬鹿にしているのではない。8000ポイントが必要だと理解していながら、たった5ポイントでここまで乗り込んできたおぬしの度胸を褒めているのだ。皮肉ではないぞ、その証拠にーー」  ひとしきり笑った後、嵯峨野 善十郎は黒衣の胸元を手で探り、その中から琥珀(こはく)色に光る「輝石」を取り出した。 「おぬしの度胸に免じて、特別ルールを設けてやろう。今ここで、ワシを倒すことができれば......おぬしを特別に、この塔の中に入れてやーー」  黒衣の坊主が、その言葉を放った瞬間。  京は、「輝石」をまだ握り潰していない彼を目指して、先手を取るべく、獣のような速さで突進を始めていた。
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