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「……ん?あれ?離れ、ない。んん?」
京の掌が、壁に吸い付いたままびくともしないのだ。接着剤で貼り付けられたような感覚とは違った。
それは、例えるならば磁力だ。粘着力によってお互いがくっついているのではなく、それぞれが持つ見えない力によって引き寄せられている感覚。
「なるほど!これがあなたの十六能力なのね」
納得したように声をあげたのは、厘。
「自分の体と、他の物体をくっつける能力。それが『定立』よ!」
ばーん、という効果音でも聞こえてきそうなテンションで少女は叫ぶが、京は落胆を隠せない様子で呟く。
「こんなので、どうやってあの石の怪物と戦えっていうんだ……」
「それは、ほら、相手が逃げないように捕獲して、そこを私が『烈火矛槍』で貫く!とか」
「それって、俺も一緒に刺されてないか……」
この世界で二か月間生き抜いてきた厘でさえそれくらいしか思い浮かばないならば、京が今の時点で考えられることなど、ほとんどない。
一体なぜ、こんな能力が自分に宿ったのだろうか。心当たりなど、すぐには思いつかない。
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