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「おまえ、鳴滝 厘だな。新人の中じゃ、トップクラスに強いっていう……。そんなら、さぞかしたくさんポイントを持ってんだろうなぁ!」
甲羅を纏った男は、まるで獲物を見つけたハイエナのように、舌なめずりをしながら厘に近づく。
そのとき、持ち主の傷の深さか、あるいは恐怖に反応するようにーー「烈火矛槍」が厘の手から消失し、ペンダントに戻った。
「おれには、もう、時間がないんだ……。時間が……あ……ああ!」
男の理性は、すでに崩壊していた。人間でなくなったかのような奇声を発し、厘に殴りかかる。
姿勢を崩しながらも、厘はその拳を寸前で避け切り、京に向かって叫ぶ。
「この人は、もうすぐ3年の期限が終わって、死んでしまう『府民』よ!だから無差別に他の『府民』を襲っているんだわ。私が引きつけるから、早く逃げて!」
その叫びが耳に届いても、京は退こうとはしなかった。
厘を助けに行きたい。……だが、あの「烈火矛槍」をも阻む装甲に対して、京ができることなどあるのだろうか。
「定立」は、およそ戦いには向かない力だ。それを差し引いても、「冥府」での殺し合いどころか現実世界の喧嘩すらしたことがない京には、3年間もこの世界で生き残り続けた男とまともに戦えるとは思えない。
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