もうひとつの命題《テーゼ》

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「――待てよ」  大きく、一歩を踏み出す。  もう、迷いはなかった。装甲を身につけた大男を「拒絶」するために、京はその足を進める。  その時、彼のポケットの中の「府民証」が震え、画面に新たな文字列が生まれたことは、その場の誰も知る由もなかった。 「あ、ああ?」  装甲の男が、厘に向けて振り上げた拳を下ろし、のそりとした動きで京のほうへと振り返る。 ――「No.936 嵐山 京」――  「敵」を見据えて、京は駆け出す。 ――「第1『十六能力(イザヨイ)』名  『定立(テーゼ)』」――  握りしめた拳の上には、黒い(・・)魔方陣のような円が浮かんでいた。 ――「第2『十六能力(イザヨイ)』名」――  人と和解し、歩み寄るという命題(テーゼ)ではなく。  その逆、誰かと争い、敵を遠ざけるための、力。 「おおおおおッ!!」 ――――――「『反定立(アンチテーゼ)』」。
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