喪失に至るカウントダウン

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喪失に至るカウントダウン

【06:15】  「冥府」の町並みに敷き詰められた青いタイルを、冷たい雨が打ち鳴らす音が聞こえる。不思議とこの世界は、雨が降ってもじめじめとした湿気を感じなかった。  ハイツ・デネブの隣に位置する、名もない建物の二階、その一室で、京は三日前の「イベント」で手に入れた「宝」をまじまじと見つめていた。  黄金でできたような、金色に光る指輪。天井から下がる薄暗い照明に照らしてみると、それはキラリと鋭い光を発する。しかし、だからといってこの指輪に何かが起こるという訳ではないし、その正体がわかる訳でもない。  外見からしても、これは十中八九、人間の指にはめて使うものだった。しかし、京が適当な指にはめてみても、そのリングはうんともすんともいわない。これが何か特別なものではなく、単なる装飾品であることは容易に理解できた。 「なあ、厘。これってなんだと思う……?」  京は、隣に座る栗色の髪の少女に問いかける。彼女は先の「イベント」で負った傷が治りつつある右頬に人差し指をあててから、 「うーん、指輪?」 「それはそうだけど……例えば、有名なブランドのやつだとか、そういうんじゃないのか?」 「私もあんまり詳しくはないけど、たぶんそれは、『府民』がこの世界に持ち込んだものじゃないと思うよ。『イベント』の報酬であるからには、『運営』側が用意した特別なアイテムだとか……?」  二人して頭を抱えても、答えが出るはずもない。うんうんと唸る二人の間に、外で降りしきる雨の音が割りこんだ。
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