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「……ちょっと、話を整理しよか」
青いタイルで舗装された道を疾走しながら、ハイツ・デネブの四人――京、厘、八千代、ガイは「蒼魔の塔」へと向かう。先の「イベント」が終わってからは沈んだような表情が多くなった八千代やガイも、今ばかりは確たる顔つきで事態に対処しようとしていた。
「この変な音は、あの塔の頂上から聞こえてくる。……そんでもって、そこには京くんのお姉さんがいて、さらには『運営』がいる可能性が高い、とーーそういうことやね?」
「はい。あそこで、姉ちゃんが昏睡状態になってるっていうのは、『番人』の坊主が言ってたことからも確実だと思います。でも、『運営』のほうは、俺の予想でしかないんですけどーー」
息を切らしながらも、京は八千代の車椅子に並走する。相当な速さで進む彼女においていかれないように、京は必死に足を動かした。
「とにかく、あの人……大久保 四乃さんの言っていた『今日、「冥府」は終わりを迎える』って話が本当なら、『運営』が何らかの形で、この殺し合いのゲームを強制的に終わらせようとしている、ってことが言えるんじゃないかと思います」
「なるほど……」
神妙な面持ちで、ガイが呟く。そして、彼は走りながらも自身の「府民証」を取り出し、画面を操作した。
「しかし、この端末にはなにも『通知』らしきものは来ていない。……もちろん、『運営
』が黙って事を進めるつもりならば、それも不自然ではないのかもしれないが……」
「そもそも、大久保 四乃っていう人は何者なの?京の話だと、京が初めてハイツ・デネブに来た時に紹介された人で、しかも京に不思議な右腕を与えた人だってーー」
「わからない。……けど、あの人が何らかの方法で人の記憶を消すことができる、っていうことだけはいえる。俺だって、この右腕をあの人からもらったことを、今の今まで忘れてたんだからな」
青く透き通る、明晰夢のような右腕。それは普段の冷たい感触を忘れてしまったかのように、今は焼け石のように熱く、そして何かに反応しているかのように、巨塔へと近づくたびにその温度を上げる。
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