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――その瞬間。
突如、京の隣で、かくん、という音が聞こえてきた。反射的にそちらを見ると、車椅子に座ったまま、八千代が居眠りをするように頭をもたげている。
「――八千代さん?」
続いて、カラン、という、固いものが床に転がる音。それは、厘の手から離れた槍がたてたものだった。さらには、栗色の髪の少女が、そして姿を消したままのガイが、崩れ落ちるようにして倒れる音が響く。
「なっーー!?」
何が起こった。京がそう口にする前に、いつの間にか、鋼鉄のダンゴムシのような生物が、少年のすぐ目の前まで迫ってきていた。それは、彼に突進するでもなく、ただ、少年の横を静かに通り過ぎる。
それだけなのに。
――京は、いつの間にか、気を失うようにして床に崩れ落ちていた。
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