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嵐山 京は、ただ、その太陽が墜ちてくるのを、立ち尽くしたまま待つしかなかった。
膨大なまでの熱量が、少年の肌を焼き焦がす。痛みはない。止まったままの思考で、彼は無意識に、その光へと手を伸ばしていた。
「…………」
なぜ自分がそんなことをしたのか、京にはわからない。けれど、青い宝石のように深く澄んだその右手を視界に捉えて、少年はついに、夢の終わりを悟ったのだ。
そう。ここは現世ではない。嵐山 京が生まれ育った、あの世界ではないのだ。だからーーこれは、夢。あの光はきっと、窓の外から差し込む光。あれに包まれれば、きっと、自分は長い夢から醒める。
群青の星空の下に、生まれ変わったこと。
宝石を削り取ったような奇妙な怪物に襲われたこと。
夕焼けのような紅い槍を持つ少女に助けられたこと。
はじめて、誰かを「拒絶」したこと。
個性的な仲間や先輩と出会えたこと。
刀で腕を斬り落とされたこと。
瓦礫の下から這い上がり、生きるために戦ったこと。
蒼い巨塔へと単身で向かったこと。
仲間に過去を打ち明けたこと。
「イベント」に参加したこと。
自分の命が狙われたこと。
かけがえのない仲間を失ったこと。
――そして、姉ともう一度会うために、巨塔をのぼりつめたこと。
そのすべてが、まどろみの中に消えて、きっとまた、退屈な朝が来る。
殺し合いなんかとは無縁の、繰り返される日常。穏やかな日々。
その面影は、きっとなによりも優しくてーーーー
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