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「おい京、まさかオマエ、ここで終わりだとか思ってるんじゃないだろうな」
そのとき、横から飛んできた声に、少年はびくりと体を震わせた。
ゆっくりとそちらを向くと、もう人間の輪郭すらも見えないような光の中に、人の背丈よりも大きな、黒く細長い影が映る。
「オマエは……生きるんだろう?――かつて、この光とは対極の、なにも見えないような暗い闇の中でも、オマエは必死に抵抗したじゃねえか。あれを忘れたとは言わせねえぞ」
「……サン?」
その声は、間違いなく、京の「友人」――サンと呼ばれる少年のものであった。
光の中に浮かぶ、黒く長い影は、まるで砲台のように見えた。その砲身をゆっくりと真上へと動かし、それはやがて、周囲から闇色の粒子をかき集めるように、ブラックホールのような黒点を先端に生み出す。
サンの声は、その砲台の後ろから聞こえていた。砲台の影と、周囲を埋め尽くす光に遮られ、その姿は見えない。
けれど、彼がこんな極限の状況にあっても、不敵で意味深な笑みを浮かべているであろうことだけは、京にも理解できた。
「……俺が、初めてオマエと会ったときに言っていたことを覚えているか」
「そんなん、覚えてねえよ」
そんな彼の様子に、京は少しだけ今の状況を忘れて、ぶっきらぼうに返事をする。
その答えを待っていたかのように、すぐさまサンは言葉を続けた。
「『俺の本当の能力は、もっとドカーンと威力があるやつなんだからな』……だ」
「――それがどうしたんだよ」
「なら、俺の二つ名は覚えているか?」
黒い影の向こうから、間髪入れずに次の問いが飛んでくる。
京はとくに深く考えずに、記憶にあったその「名」を告げた。
「――『太陽を焼き尽くす黒点』」
「正解だ」
彼の答えに、サンはただ、その一言だけを口にした。
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