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「合格」
銀髪の少女は、そう呟いて、かすかに微笑んだ。
「厘をよろしくね、新入り君」
優しい口調で、歌うように、銀髪の少女は告げる。
「生きたいというなら、ちょっとだけ、力を貸してあげる。なにも訊かずに、これを受けとって」
四乃が、その左の掌を、ゆっくりと京の右手に添える。すると、どこからか深い青色の光の粒が集まってきて、切断面を優しく包んだ。
それと同時に、刺すような痛みが消える。京が驚いた表情で口を開け、右手を見つめていると、瞬く間に光の粒子は棒のように伸び、切断されたはずの「右手」を形作っていった。
本来の手と同じ大きさ、そして形。五本の指はちゃんと揃っている。
ひとつだけ、そして最も大きな違いは、その腕が生身のものではなくーー青い宝石のようなもので形作られていることだ。
それはまるで、自分が先程まで戦っていた、「明晰夢」と呼ばれる人形の怪物の腕のようで。
「これは……?」
「なにも訊かないでって言ったでしょう」
銀髪の少女は、唇に人差し指をあてて、いたずらっぽい微笑みを返した。
京は、新たな自分の「右手」を見つめながら、ためらいがちにそれを動かす。予想に反して、五本の指は滑らかに動いた。まだまだ違和感は強いが、手としての機能に問題はなさそうだ。
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