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再び少女のほうへと顔を向け、京は尋ねる。
「この手のことについて訊いちゃいけないっていうなら……きみのことについて訊きたい。きみは一体、何者なんだ?誰も眠ることができない『冥府』で、ひとりだけいつも眠っている、きみは……?」
「今は、この夢の主、とだけ言っておくわ。……もっとも、今ここできみに話したことは、忘れてもらうつもりだけどね」
「それは……」
どういうことなんだ、と京が問おうとした矢先、彼の体が淡い光となって消え始めた。それはまるで、夢から醒める前兆のようで。
「また会いましょう、嵐山 京くん。あなたが、この世界の真実と向き合ったときーー私たちは、きっとまた対峙することになる」
眠たげな瞳の奥に、底知れない強い光を宿して、大久保 四乃はそう言い放つ。
その言葉の真意を問う間もなくーー京の体は、その全てを霧のような細かな光へと変えて、白く混濁した空間から完全に消え去った。
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