厘という少女

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『「冥府(メーフ)」へようこそ、嵐山 京さん!あなたは936人目の来訪者です!』 「え……?」  936人目。色々と気になる点はあったが、最も目を引いたのは、その数字だった。  厘の話では、この「冥府」には、300人ほどしか人がいないのではなかったか。 『あなたは16歳で死んだため、この「冥府(メーフ)」に送られてきました!』  京の疑問を無視して、「府民証」は文字列を自動で流し続ける。 『一度は死んだあなたに、またとないチャンスです!  なんと!  我々が定めた「点数(ポイント)」を10000まで集めることができれば、あなたを元の世界に生き返らせてあげましょう!』  その文字を見た瞬間。  頭の中が焼きつくような感覚に襲われ、大きくふらつく。 「ち、ちょっと、大丈夫!?」  慌てた様子で、厘が駆け寄る。 「仕方ないわよ、生き返らせるなんて言われたら。まだ心の整理もついていないのに……」  否。  自分が生き返れると言われたから、ふらついたのではない。  なにか大切なことを思い出しそうになったから、衝撃を受けたのだ。  なんだ。思い出せ。おもいだせ。  ーー自分はなぜ、ここが死後の世界だと一瞬でわかった? 『ポイントを集める方法は、ふたつ。一つは、「明晰夢(ルシッドメア)」を倒すこと』  自動的に、無感情に、「府民証」に文字が流れる。  時間が経つにつれて少しは落ち着きを取り戻した京は、ひとまず忘れていた記憶のことは隅に置き、厘に向かって尋ねる。 「この、明晰夢(ルシッドメア)っていうのは……」 「さっきの怪物のことよ。不定期な時間にこの町に出現する。やっかいな奴らよ」  言われて、京は先ほどの光景を思い出した。  宝石を削り取り、人の形にしたような怪物。人を傷つけようと襲ってくる存在。  しかし、それを倒せばポイントが加算されるなど、いかにもゲームのようだ。
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