白鳥と刹那の分岐点

5/9

188人が本棚に入れています
本棚に追加
/523ページ
 押し殺すようにその事実を告げた後、八千代は静かに目を閉じた。  厘やガイ、そしてサンも、お互いに目を逸らしたまま、何も語ろうとはしない。  長い沈黙。  それを破ったのは、その事実を実感しきれない京だった。 「……なんで、そんなことを」 「『蒼魔の塔(リボラ・タワー)』」  厘からの答えは、聞き慣れない言葉で示された。 「京も、知ってるでしょう?『冥府』の中央に(そび)え立つ、あの塔のことを」  蒼魔の塔(リボラ・タワー)。  それは考えるまでもなく、この街の中心に、圧倒的な存在感を持って屹立するあの塔のことだ。初めて見たとき、生前に見たスカイツリーよりも高い、という感想を浮かべたのは記憶に新しい。  だが、それが例の事件とどう関係するというのか。
/523ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加