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『もう一つは、ポイントを持った他の「府民」を殺すこと』
続けて表示された文字列を見て、京は心臓を鷲づかみにされたような感覚を覚えた。
「こ、これってどういうーー」
「文字通りよ。ポイントを持った他の『府民』を殺せば、その人が持つポイントの10分の1が自分のものになる。私は600ポイントを持っているから、仮に私を殺せば、60ポイントがあなたのものになるわ……」
少しためらいがちな様子で、厘は答えた。
この世界では、人同士の殺し合いが行われているというのか。ーーまだ自分がひとつもポイントを持っておらず、厘に狙われる可能性がないことに、京は安堵した。
……いや。この少女は、例えポイントを持っていたとしても、自分を殺すようなことはしないだろう。人付き合いに慣れず、他人の考えていることなど分からない京ですらも、それぐらいのことはわかった。
この、気高く美しい少女は、きっと「正しく」生きようとしている人間なのだ。ーー自分の姉が、そうであったように。
ふたたび、頭の奥がチリチリと焼けつくような感覚。しかし、今はそれを気にしている場合ではない。
『期限は3年。それまでに10000ポイントを集められなかった場合は、そこで死にます!二度と生き返ることはありません。また、途中で死んだ場合も、もちろん同様です!生きて10000ポイントを集めることができた人だけが、元の世界に生き返ることができます!』
「……それで、936人目、か。およそ600人の人がこれまでに死んだ――もしくは生き返った。厘、生き返った人はどれくらいいるかわかる?」
「私はここに来て二ヶ月だけど、私の知る中にはいないわね。……ただ」
「ただ?」
「死んだ人は、たくさんいる」
また、感情を殺すような声で、厘は告げた。栗色の長い髪が揺れる。
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