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そして、今。
「久しぶりだな、お前ら。この場所は……なにも、変わってねえな」
円柱形の外観をしたハイツ・デネブと呼ばれる建物に、一つの声が響き渡った。
細くしなやかな体と、整った顔立ちを持った青年。彼は姿を見せるや否や、なんでもないようにそう言った。その声には、仲間への負い目や、あるいは、敵対心すら微塵も含まれていないように感じられた。
「おこしやす、ハイツ・デネブへ。またの名を、あんたの墓場へ」
「八千代、それは気が早い……!」
最初に前に出たのは、車椅子に腰をかけた八千代と、相変わらずおどおどした様子のガイだった。
二人を見て、石田刹那は薄い笑みを浮かべる。
「よう、八千代、ガイ。オマエらも相変わらずだな」
そして彼の視線は、後ろに立つ厘とサンに向けられる。
「厘、そろそろ落ち着いたか?……びっくりしたぜ、あんな形相で突っ掛かってくるんだからな。もし俺が弱かったら、そのままグサリでオダブツだった。――そしてサン、いい加減中二病は治ったかよ?まだ『モアなんとか』って名乗ってんじゃねえだろうな」
「刹那さん……」
「『太陽を焼き尽くす黒点』ですぜ、刹那さんよ」
複雑な表情を浮かべる厘と、いつも通りの調子のサン。
そして刹那の視点は、その横に立つ京へと向けられる。
「よう、新入り。……って、オマエ死んでなかったのかよ!」
「残念ながら、ですけどね」
まるで幽霊でも見たかのような反応をする刹那に対して、京は冷たく返す。
「それに、その右腕……。オマエ、一体、何者なんだ?」
「それを答えたら、姉ちゃんがどこにいるか教えてくれますか」
「……いや、やっぱりいい。面倒だ」
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