白鳥と刹那の交差点

3/12
188人が本棚に入れています
本棚に追加
/523ページ
 そして、今。 「久しぶりだな、お前ら。この場所は……なにも、変わってねえな」  円柱形の外観をしたハイツ・デネブと呼ばれる建物に、一つの声が響き渡った。  細くしなやかな体と、整った顔立ちを持った青年。彼は姿を見せるや否や、なんでもないようにそう言った。その声には、仲間への負い目や、あるいは、敵対心すら微塵も含まれていないように感じられた。 「おこしやす、ハイツ・デネブへ。またの名を、あんたの墓場へ」 「八千代、それは気が早い……!」  最初に前に出たのは、車椅子に腰をかけた八千代と、相変わらずおどおどした様子のガイだった。  二人を見て、石田刹那は薄い笑みを浮かべる。 「よう、八千代、ガイ。オマエらも相変わらずだな」  そして彼の視線は、後ろに立つ厘とサンに向けられる。 「厘、そろそろ落ち着いたか?……びっくりしたぜ、あんな形相で突っ掛かってくるんだからな。もし俺が弱かったら、そのままグサリでオダブツだった。――そしてサン、いい加減中二病は治ったかよ?まだ『モアなんとか』って名乗ってんじゃねえだろうな」 「刹那さん……」 「『太陽を焼き尽くす黒点(モア・ザン・ザ・サン)』ですぜ、刹那さんよ」  複雑な表情を浮かべる厘と、いつも通りの調子のサン。  そして刹那の視点は、その横に立つ京へと向けられる。 「よう、新入り。……って、オマエ死んでなかったのかよ!」 「残念ながら、ですけどね」  まるで幽霊でも見たかのような反応をする刹那に対して、京は冷たく返す。 「それに、その右腕……。オマエ、一体、何者なんだ?」 「それを答えたら、姉ちゃんがどこにいるか教えてくれますか」 「……いや、やっぱりいい。面倒だ」
/523ページ

最初のコメントを投稿しよう!