白鳥と刹那の終着点

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「まだ、厘ちゃんの面倒も見切れてへん。うちが昔、助けてやった時のお礼もしてへん。ガイくんをいじめた謝罪もしてへん」 「お前のほうがガイをいじめてただろ 」 「サンくんの中二病を治すって言っといて、まだできてへん。新入りくんのお姉ちゃんを探す手伝いもしてへん。うちに『霧立(キリタチ)』を使わせてくれって言ってるのに、貸してくれへん。生前の恋バナを聞かせてくれって言ってるのに、全然喋ってくれへん」 「おい」 「……だから」  そこで、言葉を区切る。  次に口を開いたとき、八千代の声はかすかに震えていた。 「ここで死ぬな。今言ったこと、ぜんぶ成し遂げるまで死ぬことは許さん。これはハイツ・デネブのリーダーとしての命令や。あんたがその一員である限り、リーダーの命令はきかなあかんやろ」 「八千代……」 「あんたが死なんということは、うちらは深刻な顔をせんくてもええんや。ふざけとってもええんや。ーー悲しまんくても、ええんや……」  そこで、八千代は刹那から顔を逸らした。彼女を背負うガイも、静かに目を閉じる。  石田刹那は、崩壊して瓦礫となった自らの「拠り所」の中で、仰向けになったまま夜空を見上げた。厘が一度目の「鮮光(センコウ)」によって垂直に開けた穴のおかげで、ここからは星がよく見える。  初めてこの世界に来てから、何一つ変わらない光景。冷たい星空が照らす、群青の世界。  けれど、変わったものもあった。確かに、得たものもあった。  石田刹那は、満足げに笑う。 「……ひとつだけなら、叶えてやるよ」  体の感覚がなくなっていく。自らの四肢が淡い光となって霧散する。  けれど。  まだ、できることはあるはずだ。
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