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(あれは……)
まるで入口を守る門番のように、腕組みをしながら真っ直ぐに立つ男。その人物の体格は京が「冥府」に来てから出会った誰よりも大きく、袖から伸びる太い腕には力強い筋肉が見てとれる。
彼が着ている服に対しても、京は驚かされた。その男は、僧侶が着るような黒い袈裟を身につけていたのだ。「冥府」の街並みや「蒼魔の塔」の外観とは、あまりにもミスマッチな服装。極めつけに、彼は一本の髪の毛も残らず剃髪しており、その姿はまさに本物の「坊主」であった。彼の体格と相まって、とても自分と同じ10代には見えない。
ここは死後の世界だし、お坊さんがいてもおかしくはないのかな……と京が混乱しているうちに、向こうもこちらの存在に気づき、視線を飛ばしてきた。
そこでようやく、京は警戒のスイッチを入れ、じりじりと引き下がりながらその男を睨む。だが、彼はあまりにも気さくな調子で、身構える京に対して言葉を投げかけた。
「おう、そこの少年。そう構えずに早く来い。この塔に用事があるんだろう?」
それはまるで、親戚のおじさんが小さい子供を遊びに誘うときのような口調でーー京は面食らいながらも、警戒を緩める。
「あなたは……?」
「おう、ワシか?ワシは嵯峨野 善十郎。この『蒼魔の塔』の、番人を任されている者だ。よろしくな」
白い歯をキラリと光らせながらーー巨漢の坊主は、やけに爽やかな調子で告げた。
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