もうひとつの命題《テーゼ》

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「お、おまえは、何ポイント持ってる……?」  その人物は、視点の定まっていない目で、京を睨みつける。  京や厘よりも、年齢は一回り上。ぶくぶくと太った体には、エメラルドグリーンに輝く、亀の甲羅のような装甲が身につけられていた。  ――他の、「府民」。甲羅のような装甲は、彼の十六能力(イザヨイ)だろう。その分厚い装甲を使って、建物の上から落下してきて……厘を押し潰したのだ。  そこまで考えて、京は自分が次にすべきことは何かを迷った。厘のところに駆け寄るべきか。逃げるべきか。それとも……戦うべきか。 「何ポイント持ってるかって、きいてんだよぉぉっ!」  その男は、狂乱に身を任せて叫ぶ。どこからどう見ても、まともな精神状態ではなかった。息を荒げ、全身を激しく震わせながら、地団駄を踏む。  唖然としたまま、京は身動きをとることができなかった。 「逃げて、京……」  弱々しい声が、かすかに聞こえた。厘だ。よかった、まだ生きていたーーが、そうとうな傷を負っているようだ。無理もない、あれほどの巨体に押し潰されたのだから。  震える手で、厘はペンダントの宝石を握りつぶし、「烈火矛槍(レッカムソウ)」を展開させた。倒れたまま、男に向かってその槍を突き出す。だが、弱った体から放たれたその矛先は、男の纏う装甲によっていとも簡単に阻まれた。 「は、はは、残念だったな、おれの『亀甲男(キッコウマン)』には、そんな攻撃はきかねえ」  ニタニタと笑いながら、男は厘のほうに向きなおる。
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