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「……『亀甲男』、だってよ。笑っちゃうじゃないか」
かろうじて出てきた言葉は、例えようもない感情で濡れていて。
「……あの人も、ここに来た最初の日――はじめて自分の『十六能力』を見たとき、きっと『なんだよこの名前!』ってツッコんだんだと思う。それでも、戦って戦ってーーそして今日、死んだ」
装甲の男がどのようにして生きたのかは、京にはわからない。だが、もちろん、死にたくなんてなかったはずだ。――だから、無差別に人を襲うほど生に執着した。
「俺は……生きるよ。生き返るよ。姉ちゃんも一緒に」
右の拳を、握りしめる。自らに宿った、ふたつの力を確かめるように。
と、その時、何かを思い出すように厘が叫んだ。
「――そうだ!さっきの『十六能力』はなんなの!?『定立』とは違うみたいだったけど……。それに、お姉さんを探し出すっていうのもーー」
いつもより早口でまくしたてる、その言葉が終わるか終わらないかのうちにーー
京は、倒れこむようにして意識を失った。
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