喪失に至るカウントダウン

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【06:05】  一旦その石をポケットの中におさめ、京は自身の「府民証」を取り出し、その画面を眺める。そこには、「1105」という数字が表示されていた。「イベント」で獲得したものと、あの広大な邸宅の中で倒した明晰夢(ルシッドメア)から得たポイントで、彼の総ポイントは「生き返り」に必要な十分の一を記録している。このペースでいけば、期限の三年以内には10000ポイントを貯めることができそうだが……彼にとっての問題は、そこではない。  「蒼魔の塔(リボラ・タワー)」の中で昏睡状態になっているという姉を探し出し、彼女を助ける。京の目的は最初から変わりなかったし、これからも変わらないだろう。沙耶ともう一度出会い、そして共に生き返るまで、少年の戦いは続くのだ。  その端末が持つ機能のひとつである、「冥府の地図」を表示させながら、京はまじまじとその画面を見つめる。  広大な街の中心部に、丸く大きな円が描かれ、そこに「蒼魔の塔(リボラ・タワー)」の文字列が見える。さらに少し離れたところに、先の「イベント」の会場となった「メラク・トリリオン邸」。そして、街の外れ、海にほど近い場所に「ハイツ・デネブ」という表記があった。  前の二つは、その規模の大きさからなんとなく想像はつくがーーなぜ、他の有象無象の建物と同じ構造であり、しかも街外れにある「ハイツ・デネブ」が固有の名称を持つのだろうか。今となっては大部分が倒壊し、人が住めなくなったその円柱が、「冥府」にとって「何」なのか、京は知らない。そしてまた、知る手がかりもないだろう。  またしても答えの出ない問いに頭を悩ませながら、京が「地図」に表記された「ハイツ・デネブ」の文字を睨んでいたときーーふと、そのすぐ隣に、赤い光点が表示された。 「ん……?」  一度目をこすり、再びそれを確認する。しかし、その点は確かに、今まさに京がいる建物を示していた。  そして。
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