京と沙耶

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京と沙耶

 昔から、他人との距離感がつかめなかった。近すぎても、遠すぎても駄目。もとより大人しい性格だった京は、いつしか人との関わり合いを避けるようになっていった。学校には通っていたが、それも単なる義務感からに過ぎない。友達は少なかったし、授業もおもしろくはなかった。  そんな京の唯一の拠り所が、姉の沙耶さやであった。清く、美しく、自分をいつでも守ってくれる存在。彼女の優しさがあったからこそ、京は道を外さずに成長することができたのだ。依存と言われればそれまでかもしれない。だが、京は沙耶に対して、他の何よりも強い感謝の気持ちを持っていた。沙耶がいれば、孤独な世界も暖かかった。このまま永遠に二人の関係が続けばいいと、そう思っていた。  ーーだが。沙耶は死んだ。  二人で買い物をした帰り、飛び出してきたトラックから京を守ろうとして、彼の姉は死んだ。真っ白な頭で、真っ青な顔で、京という少年は二度と戻らない日常が去っていく足音を聞いた。  気がつけば、涙を流していた。姉が見れば、男の子なんだから泣くんじゃないよ、と叱られたかもしれない。だが、その姉ももういないのだ。なにもかもゼロになってしまった感情の中で、確かに、少年は涙を流した。零れる粒は、血のような味がした。  それから後の一年間は、抜け殻のように過ごした。学校には通い続けたが、以前のような義務感からそうしたのではない。ただ、学校に行かなければ姉に叱られてしまうかもしれないから。  毎日ご飯を食べなければ、姉が心配するかもしれないから。  両親に暗い顔をしてしまうと、姉が落ち込んでしまうだろうから。  だから、生きた。いや、死ななかった・・・・・・。なんとか心臓を動かし、体に血を巡らせた。意味もなく。理由もなく。
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