夜空のテーゼ

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*  嵐山 京は、ただ、その太陽が墜ちてくるのを、立ち尽くしたまま待つしかなかった。  膨大なまでの熱量が、少年の肌を焼き焦がす。痛みはない。止まったままの思考で、彼は無意識に、その光へと手を伸ばしていた。 「…………」  なぜ自分がそんなことをしたのか、京にはわからない。けれど、青い宝石のように深く澄んだその右手を視界に捉えて、少年はついに、夢の終わりを悟ったのだ。  そう。ここは現世ではない。嵐山 京が生まれ育った、あの世界ではないのだ。だからーーこれは、夢。あの光はきっと、窓の外から差し込む光。あれに包まれれば、きっと、自分は長い夢から醒める。    群青の星空の下に、生まれ変わったこと。  宝石を削り取ったような奇妙な怪物に襲われたこと。  夕焼けのような紅い槍を持つ少女に助けられたこと。  はじめて、誰かを「拒絶」したこと。  個性的な仲間や先輩と出会えたこと。  刀で腕を斬り落とされたこと。  瓦礫の下から這い上がり、生きるために戦ったこと。  蒼い巨塔へと単身で向かったこと。  仲間に過去を打ち明けたこと。  「イベント」に参加したこと。  自分の命が狙われたこと。  かけがえのない仲間を失ったこと。    ――そして、姉ともう一度会うために、巨塔をのぼりつめたこと。  そのすべてが、まどろみの中に消えて、きっとまた、退屈な朝が来る。  殺し合いなんかとは無縁の、繰り返される日常。穏やかな日々。  その面影は、きっとなによりも優しくてーーーー
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