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『「府民証」にはな、一日に一回だけ、他の「府民」にメッセージを送れる機能があるねん』
昨日、八千代が京に向けて解説した言葉。
『これで、あいつにメッセージを送る。明日の12時に、ハイツ・デネブに来い、ってな』
『でも、八千代さん、刹那さんが出ていってから、私たちがあの人に送ったメッセージは……全部、返ってこなかったじゃないですか。それに、あの人は八千代さんには会いたくなかったってーー』
反論したのは、厘だった。彼女にしては珍しく、語気を荒げて八千代にくいかかる。
『確かにそうやな。あいつは、うちらのことなんか、もうすっかり忘れてしまったもんやと思ってた。……でも、厘ちゃんと新入りくんを助けたあの時、うちは刹那と少しだけ喋ったんや』
京が腕を斬られて、気絶してから少し後の出来事。
『――結論から言って、あいつはうちらのことを忘れてなんかなかったよ。口や態度では、飄々として関心を見せへんかったけど……あいつの目を見れば、ぜんぶ分かった。あいつは、ハイツ・デネブに未練がある。それが、うちらへの罪悪感なんか、それともあの時、全員を殺しきれへんかった心残りなのかは知らんけどな。……とにかく』
それから一呼吸を置いて、強い口調で彼女は告げた。
『石田刹那は、必ず来る。うちらとの関係に、思い出にーー決着をつけにな』
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