5/17
前へ
/17ページ
次へ
 ケノザが目を覚ましたとき、ななめに入る朝日をあびて、レオナールは炭の棒を手にしていました。 「おはよう。ねむれた?」 「はい。とてもよく。あの……」  ベッドから身を起こしたケノザはレオナールを見つめます。 「ああ、とってもきれいな寝顔だったから、つい残しておきたくなって」  ほら、と古紙にしたスケッチを見せてくれました。 「まあ。これがわたし?」  そこには、これから花開くのを待つ乙女の顔がありました。  さわっただけでこわれてしまいそうな、つつましさです。  ケノザが春先にだけ咲かせる、細く小さな淡い紫の花を思わせました。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加