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「ぼくは仕事に行くけど、ゆっくりしていておくれ」 「絵を描くのが仕事ではないのですか?」 「それだけじゃ、まだまだ食べていけないよ」  あるときは畑の種まき、あるときは家を作る石運び、あるときはパン屋の店番。  いろいろなお手伝いでわずかばかりのお金を手に入れて、空いた時間に絵筆をとっているのだと、照れくさそうに頭をかくのでした。  これならば、この男を貧乏にするのはたやすいことだ、とケノザの心はうきたちました。  レオナールは、たくさんのお金を持っているわけでもなく、大きな家に住んでいるのでもありません。豊かな暮らしとは無縁の若者です。  今、ほんの少しある稼ぎがなくなれば、たちまち貧乏の底に落ちこむはずです。  青年の不幸な将来を思いうかべて、ケノザは上機嫌になりました。    夕暮れになり、扉を開けて入ってきたレオナールも、とびっきりのご機嫌でした。 「きみは幸運の天使かもしれない」  興奮してケノザの手をとりました。あんがいにしっかりとした分厚い手の平が、少女のきゃしゃな手をつつみこみます。
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