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「ケノザの絵を画商に見せたら、売り物になるって言うんだ」
「わたしの絵が売れるのですか?」
「そう。さすがに古紙じゃダメだけど、ちゃんとキャンバスに描けば、いつもより高く買ってくれるって」
それに、と口もとをほころばせながら、ポケットに指先をさし入れました。
「新しいキャンバスを用意するお金まで出してくれたんだ。こんなこと初めてだよ」
広げた手の平には、銀貨が一枚光っています。
こんなはずじゃあ、とケノザは声に出さずにつぶやきました。貧乏神としての力がまだまだなのかと、ひっそりとため息もつきました。
レオナールは今朝がた自分で描いた絵を、両手で広げて見つめています。
「気持ちがおだやかになって、そのあとに自然と笑みがわいてくる、やさしい寝顔だね」
青い目が、やわらかな光をたたえながら、にっこりとほそめられました。
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