7/17
前へ
/17ページ
次へ
「ケノザの絵を画商に見せたら、売り物になるって言うんだ」 「わたしの絵が売れるのですか?」 「そう。さすがに古紙じゃダメだけど、ちゃんとキャンバスに描けば、いつもより高く買ってくれるって」  それに、と口もとをほころばせながら、ポケットに指先をさし入れました。 「新しいキャンバスを用意するお金まで出してくれたんだ。こんなこと初めてだよ」  広げた手の平には、銀貨が一枚光っています。  こんなはずじゃあ、とケノザは声に出さずにつぶやきました。貧乏神としての力がまだまだなのかと、ひっそりとため息もつきました。  レオナールは今朝がた自分で描いた絵を、両手で広げて見つめています。 「気持ちがおだやかになって、そのあとに自然と笑みがわいてくる、やさしい寝顔だね」  青い目が、やわらかな光をたたえながら、にっこりとほそめられました。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加