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キャンバスの中で眠るケノザの絵は、とても小さいにもかかわらず、今までで一番の値がつきました。お手伝いの仕事をしばらくしなくても、暮らしていけるほどの金額です。
「もっと大きな絵を頼むと、今度はキャンバスだけでなくて、絵具代までくれたよ」
じゃらりと銀貨をテーブルに置いたあと、レオナールはケノザの手をとってはずむような声を上げました。
「本当に幸せの天使がやってきたみたいだ」
厚みのある手の平にくるまれながら、ケノザは心の中でおもわくがはずれてしまったことを悲しみました。
画家の若者を貧しくしなくてはならないのに、自分がとりついたことで、お金を手にするようになったのですから。
ケノザは一心に願いました。
どうか、絵が売れませんように。
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