ぼくのかみさま

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賑やかな楽器の音。いつもよりも着飾った人々。その表情は皆明るく、自然の溢れる豊かな村で1年に一度の祭りが始まろうとしていた。 「一体どこに行くの!?ダメよ、私は行けないわ!」 「静かに!……君を助けたいんだ……!お願い、一緒に来て!」 そんな村の人目を避けるように一人の少年が少女の手を引き走っていた。少女は慌ててその手を振り払う。村の人よりも多くの煌びやかなアクセサリーを付けた少女は首を横に振った。 「私はこの祭りで神様の元へ捧げられるの。あなたも知っているでしょう?××。」 「だから君を助けたいってさっきから何度も……」 「バレたらただじゃ済まないわ。私も、あなたも。……ねぇ、帰りましょう?」 村で行われる祭りでは毎年成人前の子供が1人、神様へと生贄に捧げられる。1年間の豊作や病にかからないように、と村人にとっては重要なイベントであり、捧げられる者は巫女と呼ばれ祭りの間は誰もが巫女を……まるで神様のように扱った。 「神様なんているものか!大人達の勝手だろ……!!僕には関係ない。君にも関係ないんだよ……!」 「でもダメよ。決まりは守らないといけないわ。……ありがとうね、私を心配してくれて。……ごめんなさい」 少年と少女は幼なじみだった。こうして2人が言葉を話す前……赤子の頃からずっと一緒にいた。そして……少年は少女に恋をしていた。 少女に拒否された少年は衝撃を受けたような表情をする。……神様なんて馬鹿馬鹿しい、そう昔から言っていたのは紛れもなく少女だったのだ。 「そんな……だって君だって……」 「……馬鹿は私みたい。本当はね、逃げたいのよ?でも家族を残して……この役目から逃げたら家族がどう思われるか考えたら、そっちの方が怖いの。……だから、ごめんなさい」 少女は顔を伏せた。よく見れば手は震えている。少年が口を開こうとしたその時、2人の近くで叫び声が響いた。 「巫女様を見つけたぞ!!」 巫女がいなくなったのはとっくに村中に知れ渡り村人達は消えた巫女を探していた。 ハッとし少女は顔を上げ少年を見て、口を動かした。 『にげて、××』
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