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「どうしたの」
私の声は空中に上がる花火のお腹に響く音と、周りの歓声にかき消された。
花火が始まったのだ。
「……俺さ、実は昔の岸さんのこと覚えてないんだ」
河野くんの顔が、次の音が届くより早く開いた花火の光に照らされる。
一拍遅れて、ドン、という音がまたお腹の底に響く。全身に響く。
花火の光は、音よりも早く人間に届く。理科の授業で習った通りだ、そんな関係ないことが頭の中によぎり、目の前の彼の輪郭を曖昧にする。
「何年か前にSNSで繋がったときは岸さんが愛媛の共通の知り合いと何人も繋がってたから、俺の知り合いかなって思って友達申請したんだよね。
小学校の名簿確認し直したら、確かに岸さんの名前があって、同じクラスだったってことはちゃんと分かったんだけど」
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