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そして二度あることは三度ある。
「あぁ、えーと、、、スヴェンさんとブランドーさん、、、、じゃなくてディオさん、おはようございます。」
危ない危ない。
「はい、おはようございます。」
そう言ったのはディオさんで、スヴェンさんはガンを飛ばしたまま黙っている。
「えーと、、、」
気まずいな、と思いながらそのまま二人の間をすり抜けようとしたとき、スヴェンさんが口を開いてた。
「今ならまだ間に合う。」
何が、とは聞かなくてもわかる。
「いえ、私は行きます。」
マコトは立ち止まって、スヴェンを見上げた。
スヴェンはマコトと目を合わせることなく前を向いたまま言葉を続ける。
「わかっているのか。」
「言いたいことはわかります。今までの試合で誰も殺さなかった私に現国王を殺せるのか、ということですよね?」
ダリルさんにも言われた。
「それだけではない。国王になった後の覚悟はあるのか。」
「あります。」
「お前はまだ知らないだけだ。国王がどのようなものなのかを。」
「そうかもしれません。でも、私はなります。」
「駄目だ。」
スヴェンさんは眉間にシワを寄せた。
「あなたに駄目だ、と言われる筋合いはないのですが。」
貴族にこんな口をきいていいのだろうか、と思いながらも少しガツンと言ってみる。
いやいや、そもそも偉そうな口をきいてきたのは向こうだし。
貴族ってみんなこうも上から目線なのだろうか。
「お前にはなれない。」
「そんな言葉で私が諦めるとも?」
「スヴェン様、彼女は、、、その、大丈夫なのではないでしょうか?」
ディオさんが困った顔で言うとスヴェンさんは瞬きをしたが、やはり顔は合わせない。
「マコトさん、すみません。スヴェン様は心配なだけなのです。」
「心配は、、、、、その、ありがとうございます。」
ただ説教をしに来たうるさい人、くらいの認識だったから 心配、と言われ少し驚いた。
「でも、私は大丈夫ですから。『覚悟』は出来ています。私は自分の意思でこの国を変えたいのです。」
願うだけでは駄目なのだ。
私が、私自信がやらなければ、いや、絶対にやってやる。そしてこの国を、世界を変えてみせる。
トンネルから風が吹き抜けてくる。
その風が三人の服をはためかせた。
それ以上スヴェンが何も言わないのを確認して、マコトは前へと進んだ。
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