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マコトはポケットの中のイヤリングを握りしめ、闘技場の土を踏んだ。
観客の歓声が闘技場中を反響している。
観客席を見上げると貴族達が楽しそうにしゃべっている。
まったく呑気な人達だ。
その真ん中に座るダレンさんは真剣にスヴェンさんと何かを話している。
さすが兄弟。双子かと思うくらいとても似ている。
と、観客達がいきなりブーイングを始めた。
現国王のニクラスの入場だ。
二クラス国王は宗教団体とレジスタンスの殲滅に加え、隣国ウェールズとの戦争を好んでいた。
その莫大な軍事費を負担するのは非力な国民たちだ。
この8年の国民の負担は大きかっただろう。
マコトはニクラス国王を見た。
国王と会ったのはこれが初めてではない。
「お久しぶりです、ニクラス国王」
国王の赤い瞳がマコトを捉える。
声が届いたかはわからないが、そんな事はどうでもよかった。
マコトは湧き上がる怒りを抑え込む。
短髪黒髪、緋目のこの男は大切な家族と仲間達を殺した。
心臓が波打つ。
いや、待て、落ち着け。
まずは落ち着くんだ。
マコトは自分に言い聞かせた。
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