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「ぎゃー!!」
そう叫んだのは観客の男だった。
「まずいですね。」
クラウディオとスヴェンは素早く立ち上がった。
「2人の魔力が強大すぎて、魔術師が抑えられる魔力量を越えています。」
「くそっ」
国王の魔法の火は魔術師の結界を貫き、その強い魔力により瞬く間に客席に広がる。
それに気がついた観衆は我先にと逃げようとあっという間にパニック状態となった。
「兄上!」
スヴェンがダレンの方を見ると、それぞれ貴族の側近達が自分の主を守ろうと、周りで構えている。
しかし、当の本人たちは悠長に座席に座ったまま動こうとせず、逃げる気はなさそうだ。
このまま試合を見届けるつもりなのだろう。
「スヴェン、こちらは大丈夫だ。それより、十二貴族権限を行使する。兵と魔法を使うことを許可しよう。」
スヴェンは頷くと、駆け付けた国兵に向かって叫んだ。
「観客を退避させろ!!水を使える奴は消火しろ!!」
と言っても、駆け付けた兵達に国王級の魔力の火を消せるとは思えない。
自分がやるしかない、か。
スヴェンは貴族達の場所を除く観客席全体に水の膜を張る。
これでマシにはなるものの、気休めに過ぎないか。
さて、どうしたものか。
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