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マコトは観客席の騒ぎに気がついていた。
火の粉は舞い上がり国王側の席は燃え上がっている。
水の膜を誰かが張ってくれているが、その人の魔力が尽きれば逃げ遅れている人は炎に巻き込まれることになるだろう。
「よそ見をするとはずいぶんと余裕があるようだ。」
ふいに近くでした声に驚きマコトは右手で腰の剣を抜き、それと同時に風の魔法で体を浮かし空中へと逃げる。
そしてしまった、と思ったときには、闘技場は火の海だった。
地面では炎が波打っている。
これで自分は空中にずっといるしかなくなった。それは常に風の魔法を使い続けなければいけないということを意味する。
まぁ、これくらいは想定できたとして、想定外のものがある。
マコトは炎の中心にいる国王に向かって叫んだ。
「ちょっと!観客が巻き込まれてるってば!!」
国王はこちらを見上げている。
「おーい!みえてる?」
観客席を指差して叫ぶが、国王は動じることなくこちらを見ている。
マコトはため息をついた。
お前が早く死ねば終わることだ、と国王はおもっているのだろう。
「あー、もう!」
とりあえず水の魔法で観客席の火を消す方向で、、、
本当は風意外の魔法はこの試合では使いたくなかったのだけど、やむを得ない。
「あれ?」
水の魔法を使おうと腕を伸ばすと首筋に鈍い痛みが走る。
左手でそっとさわるとベタりと生ぬるい感触が指を触る。
手の平を確認すると、血で濡れていた。
「おっと、、、」
いつの間に。
落ち着いて服もみると、かなりの量の血ですでに濡れている。
いつ、攻撃されたのかわからないけれど、アドレナリンで痛みに気がづかなかったのだろう。
しかし、人間とは不思議なもので、気づいてしまったとたん体は自覚するものだ。
痛みと共に目眩がマコトを襲う。
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