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かまいたちの要領でつけたその傷はあまり深くないこともあり、見た目は痛々しいが多分もう血は止まっている。
「いいぞー!」
「やれやれ!」
観客席から野次が飛んでくる。
「ニクラス国王、あなたを憎んでいる人はたくさんいる。」
マコトがそう言うとニクラスは関係ないといったように無言で炎の魔法をマコトに放った。
クラクラとする頭でなんとか視界を取り戻したマコトはニクラスの炎を風で包み、そのまま炎を消す。
それを見たニクラスは少し目を見開いた。
起こったことを確かめようとしているみたいだった。
「私もその1人です。」
マコトは続けてニクラスに向かって風の魔法を放つ。
目には見えない攻撃にニクラスの白の軍服は一瞬であちこち裂け、そこから血が滲む。
「私に王位を譲って下さい。」
「ならば、本気を出せばいい。そしてさっさと私を殺せばいい。」
二クラスは唸るように言った。
今ので勝ち目がないと思ったのか、
王位を譲るくらいならば殺された方がいいと思っているようだ。
「そうですね、、、でも、その前に聞きたいことがあります。」
マコトは息を深く吸ってはいた。自然と拳に力が入る。貧血のとは違う吐き気を押さえながら言葉を絞り出す。
「村を襲ったのはなぜですか?」
「襲った、とは人聞きの悪い。どこの村のことを言っているのか知らんが救ってやったのだ。」
「何から救ったと?」
「貧しさだ。」
狂ってる!!!
「そんなのを救いと言っているなんて信じられないんですが、、、」
「あいつらも地面這いつくばって生きてるよりは死んだ方がマシだったろ。」
「そんなわけない!!」
そんなわけがないのだ。
「貧しいなりに小さな幸せに感謝し笑って過ごしてた!」
「異人に何がわかる?食べるものもないのに、苦しみながら生きることが幸せか?その地に生まれたことを一生呪って生きることが幸せか?」
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