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巻き上がる砂ぼこりを風の魔法で払いのける。
「あら、やるじゃない、あの子」
「当たり前です。」
その称賛に冷ややかにアーサーは答えた。
「あのニクラス国王の最期がこんなんだって夫人が知れば何て言うのかしら。ねぇ?」
金髪のポニーテールが揺れる。
「私の知ったことではないです。」
踵を返し、去ろうとしたアーサーを彼は呼びよめる。
「待ってよ、ぼうや。あの子が国王になったってことはあなたは側近候補なんでしょ?今のうちに軽く自己紹介でも、、」
「いえ、私は国とは一切関わりを持つ気はありませんから。」
「あら、そうなの?じゃあ、私の店で働くっていうのは?」
「あり得ませんね。」
「そう、そうなのね。ま、当然よね。」
何か含みのあるその言い方にアーサーは不機嫌に答えた。
「何が言いたいのですか?」
「その髪飾り、どこかで見たことあるのよ。」
「同じような髪飾りなどたくさんあるでしょう」
「そうね。そのタイプの髪飾りはあるものを模範につくられたものだから。オリジナルはそうね、その一つに名前が、、、」
彼が髪飾りに手を伸ばすとアーサーは瞬時に振り返りその喉元にナイフを突き立てた。
「忘れろ。それができないならどうなるかわかるな?」
その眼光は鋭く、殺意に満ちている。
それを察した彼は両手を上げておどけるように言った。
「あら、やだ。冗談にきまってるでしょ?」
アーサーは黙ったままウソをついていないか調べるように見つめた。
「このことは誰にも言わないわ。本当よ。」
そこまで言うとアーサーは一瞬だけ床を見てナイフをしまう。
「詮索のし過ぎは命を落としますよ。興味本意で行動してはいけないのは初歩の初歩でしょう?では、マコト様をお願い致します。」
アドバイスとも取れる言葉を言い残して、アーサーは歩いてコロッセオを颯爽と出て行った。
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