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「すっごい緊張したね、北城」
舞台袖に引いた直後、疲れた表情を隠すこともせずににゃんこ先輩が言った。
「そうですね……やっぱ甘くなかったっすわ」
少し神妙な面持ちで呟いた俺を見た彼女は、一瞬心配そうに眉を曲げた後に俺の背中をバシンと叩く。
「なんだぁ北城!?メンタルが弱いぞ!
それでもタマついてんのか!」
「いってえなぁ!ついてますよ特大のおいなりさんが2つ!」
ヒリヒリと痛む背中を押さえてつい大声を出してしまった俺ににゃんこ先輩は笑いかける。
「にゃぁ、そうだ北城!その域だぞ。
目指せM1!」
「いや無理ですって諦めましょ!?」
ったく、かっけえなおい……
なんて思いながら俺は、少し呆れたようにツッコミをいれた。
その後はそのまま現地で解散となった。
俺たちで勧誘会の催しは最後だったようだ。
皆が体育館から出ていく中、俺達も後に続くように舞台袖から降りて体育館の出口の方に回ると、聞き覚えのある元気な声が聞こえてきた。
「多々良にい!」
「ちょっ、なんで飛び付くんだよ……」
後ろから俺の背中に向かってダイブをかましてきた禊に向かって俺は呆れ半分で言う。
「南郷さん!お疲れ様です!」
「来てくれたんだ!ありがとね二人とも!」
律儀に頭まで下げた東雲少年を見て、苦笑を浮かべながらお礼をしたにゃんこ先輩。
本当にこいつらどういう関係なんだ?
「素人にしては面白かったよ多々良にい!」
「何様だてめーは……」
偉そうに胸を張って励ましてくれる禊に口許をほころばせて悪態をついてみると、彼女は満面の笑みで返してくる。
敵わねえなぁ……ほんと。
「よーし、わかった!
今日は私がラーメンおごってやんよ!
ついてこい!」
にゃんこ先輩が機嫌良さそうに言うと、禊があからさまに目を輝かせた。
現金だなぁ……
因みに東雲少年は畏れ多いとでも思っているのか硬直していたが……動かねえな。
「マジっすか!
あ、今月生活費ヤバイんでラーメン代下さい!
水飲んで待ってます!」
「おーし、わかった!
幼馴染みちゃん2杯食っていいよ!
北城は水淹れてね!」
「ありがとうございます南郷先輩!」
「ちょっと禊さん!?
……それはない……それはないっす……」
「水、大盛りで」
東雲少年が俺が水いれ係に決まった途端そんなことを言い出す……水大盛ってなに……
そんなこんなで部活動勧誘会は過ぎていき、俺は水しか飲めなかった……新手のいじめか?
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