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四
二十畳以上はある畳部屋の向こう側、開いた障子の先に庭園が広がる。
使徒会の任務を通達する通達室だ。
カズサとイトノが入ると、使徒会の制服を着た若い女――「神塚(かみづか)イナミ」が、長机でノートパソコンを睨みつけていた。
イナミは後ろでまとめた長い髪を揺らしながら、忙しなく書類を整理し、時折、モニタを睨みつけては、キーボードを操作する。
カズサは座布団の上であぐらをかくと、小間使いが入れた茶を一気に飲み干した。
「次の任務があるって聞いたんだが……」
使徒会に到着するころには、カズサの身体もある程度回復していたが、内部的なダメージまでは癒えていない。
カズサの状態に気づいてか、イナミは最初に「今日中の任務ではありません」と断った上で書類を提示した。
カズサの斜め後ろに座るイトノは、いつも通り不機嫌そうに口を引き結び、つまらなさそうに庭を眺めている。
カズサは気にせず、正面のイナミに視線を戻した。
「任務の内容は?」
「殺件(さっけん)です」
「どうりで俺ご指名って訳か……」
「殺件って何ですか?」
イトノの質問にカズサが端的に返す。
「人を殺す仕事だよ」
「はい?」
眉を寄せ、明らかな不満を示すイトノ。
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