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目を覚ましたイトノは、一瞬、何が起こったのか分からず、キョトンとしていたが、カズサの顔を見て、不機嫌そうに眉を寄せた。
「言いたいことがあるって目だな……。後にしてくれ。今は疲れた。次の任務もあるらしいし、本部に戻るぞ」
ヘリに乗ったカズサは、鉄壁に背を預け、座り込んで目を閉じた。
真正面に座るイトノは、悔しそうな顔でカズサを睨みつける。
「一人でも……戦えましたから……」
カズサは答えないまま、目を閉じて傷の回復に専念した。
怪我を負ったまま大砲を連発。そのツケで腹部に受けた傷は致命傷だった。ヘリが揺れる度に内臓がシェイクされ、脂汗がにじむ。
痛みに慣れていない使徒なりたての頃であれば、泣いていたに違いないと心の中で笑う。
以降、会話がない重い空気の中、カズサとイトノが乗るヘリは青空に飛び立った。
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