1/3
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ

 カズサがヘリから身を乗り出すと、山中に十万平方メートルはある巨大な敷地が見えた。  敷地に広がる建築物は使徒会本部だ。  カズサはヘリから降りると、砂利を蹴って本部入口に向かった。  門の横に設置されたセキュリティチェックに指をかざすと、カチリと音が鳴って解錠される。  本部の外観は古い寺院を想起させるが、最新鋭のシステムが随所にちりばめられていた。  カズサは玄関で革靴を脱ぐと、黒い板張りの廊下を歩いた。  カズサの様子を見て、エントランスで立ち話をしていた構成員が声のトーンを落とす。 「カズサ大佐、いつにも増して機嫌悪そうだな」 「例の新人のせいだろ。マジで野生の狼って目つきだよな」 「牙も見えそうだ」  立ち話を楽しむ構成員たちに、カズサの鋭い視線が刺さる。 「お前らさっさと仕事しろッ!」 「す、すみませんッ!」  構成員が去っていくのを見届け、カズサは歩みを再開した。 「ねえねえ、カズサ。新人はどう?」  カズサが振り向くと、使徒会大将「黒土タロウ」が立っていた。  タロウは端正な顔つきの美青年で、総白髪を掻き上げる姿は女にしか見えず、使徒会最高幹部とは思えない。  唇の端を吊り上げて笑うタロウに、カズサが声を荒げる。     
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!