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一
カズサがヘリから身を乗り出すと、山中に十万平方メートルはある巨大な敷地が見えた。
敷地に広がる建築物は使徒会本部だ。
カズサはヘリから降りると、砂利を蹴って本部入口に向かった。
門の横に設置されたセキュリティチェックに指をかざすと、カチリと音が鳴って解錠される。
本部の外観は古い寺院を想起させるが、最新鋭のシステムが随所にちりばめられていた。
カズサは玄関で革靴を脱ぐと、黒い板張りの廊下を歩いた。
カズサの様子を見て、エントランスで立ち話をしていた構成員が声のトーンを落とす。
「カズサ大佐、いつにも増して機嫌悪そうだな」
「例の新人のせいだろ。マジで野生の狼って目つきだよな」
「牙も見えそうだ」
立ち話を楽しむ構成員たちに、カズサの鋭い視線が刺さる。
「お前らさっさと仕事しろッ!」
「す、すみませんッ!」
構成員が去っていくのを見届け、カズサは歩みを再開した。
「ねえねえ、カズサ。新人はどう?」
カズサが振り向くと、使徒会大将「黒土タロウ」が立っていた。
タロウは端正な顔つきの美青年で、総白髪を掻き上げる姿は女にしか見えず、使徒会最高幹部とは思えない。
唇の端を吊り上げて笑うタロウに、カズサが声を荒げる。
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