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 道玄坂を登り切ったその場所は、いつの間にか空が黄金色に染まっていた。  いつもは人であふれかえっている道玄坂も人の気配はない。  煉獄――。  地獄とこの世を繋ぐ結界であり、悪魔が現界する際に生まれる空間だ。  イトノも車を降りて、空を見上げた。  首都高が遮る空は狭いが、奥のビルの真上には、はっきりと裂け目が見える。  割れた空から、複数の顔を持つ悪魔が現れ、ビルの上に降り立った。  双眼鏡を構えていたイトノが目を細め、眉間に皺を寄せた。 「あれは……悪魔ダンタリオン。無数の顔を持ち、右手に書物を持つ姿で現れるとされている。あらゆる学術に精通し、人の心を読み、意のままに操る力を持つ悪魔……」 「おめぇ、ウンチク話してる時だけは活き活きしてるよな」  イトノが頬を染め、反論したそうに口をパクパクさせる。  そんなイトノの様子に気づいたカズサが、心配して声をかけた。 「顔が赤いけど大丈夫か?」 「な、何言ってるんですか! 恥ずかしいからじゃありません! 風邪ぎみなだけです!」  別に「恥ずかしいのか?」と聞いた訳ではないのに何言ってるんだ、こいつ。  カズサはそう思いながら、無意識にイトノの頭に手を載せた。  カズサが幼かった頃、彼には妹のように後ろをついてくる存在がいた。     
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