別れ

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 私はマスターがカクテルを作るのを眺めるのが好きで、いつもマスターの手つきをジーっと眺めている。  シェイカーの中にウィスキーとホワイトラム、それにレモン果汁をそれぞれの分量で入れるとお砂糖を一つまみふり、フタを閉めシェイクする。  目をつぶりシェイカーの中でそれぞれのお酒がシャカシャカと混ざりあう音を聞き、うっとりとした。 「ほんとにカクテル好きだよな」 「うん。特にシェイクするのが大好き」  そんな話をしているとマスターが混ざったお酒たちをシェイカーからコリンズグラスという円柱状のグラスにそそいだ。そこに氷を入れ炭酸をトポトポっと流し込みスプーンで一周ぐるっと混ぜると私たちの前に置いた。  まずは最初の一杯。彼と乾杯をして口に含ませた。  口の中では花の蜜のような甘い風味がフワッと広がり、カラメルを少し焦がしたようなほろ苦い味わいが仄かに香る。それらを搾りたてのレモンの酸味が全体を引きしてまとめ、炭酸のシュワシュワが舌を刺激して心地よい。
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