星を数えて

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「ホントですよ、ホントに感謝してるんすよ」 前菜のフグの煮こごりに箸を入れる宮本くん。 「俺に……ですか?」 「えぇ、岡田課長が専属の縫製工場を持ちたいって社長に提案してくれなかったら、うちの工場は未だに火の車でしたから」 笑みをもらす宮本くんは、ビールのグラスに指をかける。 「イマイングループの傘下に入って無けりゃ、こんな風に余裕で、こんなオシャレな場所で飯なんか食えてなかった。きっと、今頃、銀行に頭下げるか、金策や営業に駈けずりまわる毎日でしたよ」 宮本くんは、ビールをひとくち飲み窓の景色を眺めた、 「全部、岡田課長のおかげです」 大袈裟に見えるくらいに宮本くんは、シュウちゃんへ向けて頭を下げる。 「いえいえ、そんなことはありません。宮本さんの工場は、大変優れた縫製技術のある工場です。だから、未だにアパレル業界で生き残っていけてるんですよね。違いますか?」 「確かにうちが誇れるのは、縫製工場としての品質だけです。それしかないから」 グッと一気にグラスを開ける宮本くん。 そんな宮本くんを見て、きっと随分苦労してきたんじゃないかなって思えた。     
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