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不景気で工場が軒並み潰れていく中、家業を継いだ責任者として、懸命に頑張ってきたに違いない。工場で昔から働いてくれている人たちのためにも、簡単に潰す訳にはいかなかったのだ。
その重圧と苦悩から救ってくれたシュウちゃんに宮本くんは、並々ならぬ感謝をしているんだなって感じがする。
「なんか、悪かったな。しんみりしちまうような話して」
明るい笑みを浮かべる宮本くんに合わせて、私も笑顔を見せた。
「だけど、課長、イマイングループの傘下に入るってことは、宮本さんの会社の筆頭株主は一体誰ってことになるんですか?宮本さん?」
私は考えもしていなかったようなマキの難しい質問に、シュウちゃんか優しく微笑んだ。
「形式の上では、一応イマイングループが筆頭株主なんだ。だけど、経営権をうちが行使するつもりは無い。新規事業の話は、俺に一任されている。だから宮本さんの会社の経営は、今までとさほど変わらないままで大丈夫なはずだ」
シュウちゃんの言葉に安心したようなマキ。
「そうなんですね。じゃあ、グループ傘下に入ったことだし、もう宮本さんは社長として安泰ですね」
「ホント、ラッキーだったよ。ダメ元で岡田課長の所に営業にいって、やっぱ正解だった。人との出会いって、案外大切なんだよな」
宮本くんは頷きながら、せっせと箸を動かして料理を口へ運んでいく。
人との出会い。
確かにそれは、大事で、そして難しい。
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