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「俺は部下の恋愛に口出ししないことにしています。キスも…」
シュウちゃんがチラリと私を見たような気がしたが、私はとてもじゃないがシュウちゃんの方を見られなかった。
「キスはしたいなら、すればいい」
シュウちゃんの言葉に私は凍りついていた。
なんて……なげやりな言い方なんだろう。
したきゃすればいいだなんて、すごく冷たい言い草だ。
「キスはしたい時に……するべきだと思っています」
少しも私を見ないでシュウちゃんは、宮本くんを見て話している。
したい時にする……
その言葉が、私の胸に突き刺さる。
シュウちゃんと付き合ってから、何万回、何億回とキスをした。
じゃれたような軽いキスや濃密なキス、最後にしたキスは、一体いつだったんだろう。
「じゃあ、岡田課長は宮路と山田課長の行為を肯定してるんっすね」
「……確かに、会社前だと、やりすぎです。褒められたことじゃない。でも……」
シュウちゃんが、ようやく私を見た。
胸が大きく音を立てる。自分では、制御できない心臓が自分勝手に忙しく動いていた。
「好きなら仕方ない」
シュウちゃんが、私を見ている。
何を思っているのだろう。私はシュウちゃんを黙って見つめた。
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