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シュウちゃんの言葉が頭に胸に、全身に突き刺さる。わかっていたことなのに、私が望んだ結果なのに……。
「……ちょっと、ゴメンね」
私はみんなに断りを入れて席を立つ。
シュウちゃんのいる場所から早く離れてしまいたかった。そうでないと、涙が溢れてしまいそうだったから。
口を押さえて、店内を見渡し化粧室の案内を探す。
早く、早く……。
気持ちがせくほど、余計に足は進まない。
化粧室の場所を見つけた私の?を雫がつたう。唇を噛みしめ、あえて背筋を伸ばした。
これなら、例え背中を見られても、泣いているなんてこと、きっと誰にも気がつかれないはずだ。
背中を丸めたらダメだ。下を向いてもいけない。
堂々と前を向いて歩いていけばいい。立ち上がるタイミングがどうであれ、堂々と振る舞えば大丈夫だ。
マキにも宮本くんにも、もちろんシュウちゃんにも気がつかれないですむ。
流れる雫を拭わずに化粧室までたどり着いていた。
よくやった。私は、演じ切った。
個室に入りドアを閉める。
水を流してから、私は泣いた。それでも、あまり泣けないことを私は承知している。
赤い鼻になったら、始めた芝居は台無しだ。
化粧が崩れたら、何もかもが無くなってしまう。私には、お金が必要なのだ。
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