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ひび割れた画面に表示された名前を見て、体が固まってしまう。
「どうかした? 顔色悪いけど…樹里。病院から?」
父さんの入院している病院からだと思って心配そうな表情をみせるマキ。
「違うの、大丈夫。ちょっと……ごめん」
スマホを手にして、私は、また席を離れた。
どうして、電話なんか。
店の外に出て、急いで電話に出る。
「樹里か?」
山田課長が私の名前を馴れ馴れしく呼ぶ声が聞こえてきた。
「はい、何でしょうか」
スマホを掌で覆うように隠し、声が漏れないように小さな声で返事をした。
「こっちは今、打ち合わせが済んだところだ。そっちは、まだ、岡田課長たちと一緒にいるのか?」
「えぇ」
「じゃあ、店の名前と場所を教えてくれ」
話しながら、少しずつ店から離れて歩いていた私の足が止まった。
「は? どうしてですか? まさか、ここに来るつもりですか?」
「ああ、そのつもりだ」
山田課長ってば、何のつもり?
「どうしてです? 話なら……」
そこまで言って、店の方を振り返った思わず私は息を飲んでいた。
店の外に出てきたのは、宮本くんだ。私を見つけると、ツカツカと近づいてくる。
「大丈夫か? 宮路。本当に病院じゃない? タクシー捕まえようか?」
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