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心配して追いかけてきてくれたようだ。
「ううん、平気だよ。……山田課長からだから。ごめんね、宮本くん、ありがとう」
お礼を言って私は笑顔を作った。
「山田課長か、 何だって?」
「それが……」
山田課長に会いたくないし、来てもらいたくもない。だから、口ごもってしまった。
「どうしたんだよ、宮路」
「あ、うん。……」
目の前にいる宮本くん。懐かしく思い出す学生時代の宮本くん。その武士みたいな風貌に合った性格をしている。
面倒見が良くて、頼り甲斐のある同級生だ。でも、宮本くんにも私の問題は話せない。
話せば、宮本くんに心配をかけてしまう。宮本くんなら、きっと私を助けようとしてしまうだろう。
そうなったら、宮本くんに多大な迷惑がかかる。
私の問題は、私自身が背負うべきだ。
耳に当てていたスマホから、こちらの様子を窺っていたらしい山田課長の声が聞こえてきた。
「宮本さんと話したい。電話をかわれ」
「えっ」
「早くしろ」
せかされてしまい、私はスマホを宮本くんに差し出した。
「ごめん、山田課長が宮本くんと話したいみたい。変わってくれって」
「俺と? 」
コクリと頷くと、宮本くんは、私のスマホを受け取った。
私の隣でスマホを耳に当て、山田課長と話をしている宮本くん。
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