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「山田課長、来るってさ。なあ……良かったな……でいいんだよな?宮路」
「ぇ……」
まっすぐに私を見てくる宮本くんの瞳を見つめ返した。勘ぐるように私を見ている気がする。
何か感づいたのだろうか。
だとしたら……
「もちろん……だよ。ありがとう、宮本くん」
これが今私が出せる精一杯の作り笑顔だ。
同級生の宮本くんに全てを話して、苦しい思いを全てさらけ出せたら、どんなに楽になるんだろう。
家族のこと、もらったお金のこと、シュウちゃんのこと。演技をしなければいけなくなっていること。
誰にも話せないことを1人で抱える、それがどんなに大変かを、全く考えていなかった訳じゃない。
演技を続けることが、家族、シュウちゃんのためになる。そのために1人で頑張ろうと決意したのだ。
でも、今、私は甘かったと身にしみているところだ。
宮本くんに向けて、私は、きちんと演技出来ていただろうか。そう思いながら、宮本くんより先に店に入り、マキやシュウちゃんの待つテーブルへ戻り始めていた。
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